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中小企業のAI研修は何から始める?
生成AIの社員研修を「使われる」ものにする進め方

公開:2026年10月16日執筆:清水 直也(シクミカプラス+ 代表)

ChatGPTやClaude、Geminiなどの生成AIを会社で使おうと、社員向けの研修を考える中小企業が増えています。一方で、「研修のときは盛り上がったのに、翌週には誰も使っていない」という話もよく聞きます。

AI研修は、研修の日そのものより、その前に何を決めておくかと、その後にどう使い続けるかで結果が変わります。この記事では、社員数が数名から数十名の会社を想定して、AI研修を何から始め、どう組み立て、どう定着させるかを順番にまとめます。

研修を受けても使われない理由

AI研修のあとに使われなくなる会社には、共通する理由があります。

  • どの仕事に使うかが決まっていない:「何にでも使えます」と言われても、明日の仕事のどこで開けばいいのかが分からない
  • 研修の題材が自分の仕事と違う:旅行の計画や料理のレシピで練習しても、見積もりや報告書には結びつかない
  • 入れてよい情報が分からない:お客様の名前や数字を入れてよいのか不安で、結局使わない
  • 使ったことが評価されない:AIで早く終わらせても誰も気づかず、従来のやり方に戻る
  • 困ったときに聞く相手がいない:うまくいかなかった1回で「やっぱり使えない」と判断してしまう

どれも、社員の意欲や能力の問題ではありません。研修の前後の準備で防げるものです。逆に言えば、研修の内容を良くするだけでは足りず、研修の前と後を含めて一つの流れとして考える必要があります。福岡のAI導入支援・AI研修でも、研修の日より前の準備と、研修の後の定着に多くの時間を使っています。

研修の前に決めること

目的を一文で決める

最初に、経営者が「なぜAIを使うのか」を一文で決めます。「流行っているから」ではなく、会社の困りごとに結びつけるのがコツです。

目的の例「見積もりと報告書の下書きにかかる時間を減らし、現場とお客様に使う時間を増やす」
「新人への説明を、教える人によってばらばらにしない」
「問い合わせへの返信を、早く、同じ品質で返せるようにする」

目的が決まると、研修で扱う内容も、あとで振り返るときの物差しも決まります。

AIに任せる仕事を洗い出す

次に、社内の仕事の中から、AIに下書きを任せられそうなものを書き出します。AIが得意なのは、ゼロから考える仕事よりも、材料があって形を整える仕事です。人が確かめて仕上げる前提で、「下書き」を任せると考えると選びやすくなります。

部署・担当AIに下書きを任せやすい仕事の例
営業提案書の構成、訪問前の下調べのまとめ、お礼メール、商談メモの整理
事務・総務社内のお知らせ文、議事録の要約、マニュアルの文章の整理、表の整形
現場(建設・店舗など)作業報告書、お客様への説明文、口コミへの返信の下書き
経営者・管理職社内向けメッセージ、求人の文章、会議の論点整理、資料の要約
教育担当新人向けの手順書、よくある質問の一覧、理解度を確かめる問題

全部を一度に始める必要はありません。この中から、毎週発生していて、時間がかかっていて、失敗しても取り返せるものを2〜3個選び、研修の題材にします。

社内ルールを決める(入力してはいけない情報)

社員がいちばん迷うのは「何を入れてよいか」です。ここが曖昧なままだと、慎重な人は使わず、気にしない人は何でも入れてしまいます。研修の前に、最低限のルールを紙一枚で決めておきましょう。

  • 使ってよいサービス:会社で決めたAIサービスとアカウントだけを使う
  • 入れてはいけない情報:お客様の氏名・住所・電話番号、社員の個人情報、取引先との契約内容、パスワードなど
  • 入れる前の置き換え:名前は「A様」、金額は「〇〇円」のように置き換えてから入れる
  • 出てきた答えの扱い:AIの答えは下書きとして扱い、事実・数字・固有名詞は人が確かめてから使う
  • 迷ったときの相談先:判断に迷ったら誰に聞くかを決めておく

個人情報保護委員会は、事業者が生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する場合には、利用目的の範囲内かどうかを十分に確かめることや、本人の同意なく個人データを入力し、それが回答を作る以外の目的で扱われる場合は法律に違反するおそれがあることなどを注意点として示しています。使うサービスが入力した内容を学習に使うかどうかの設定も、あわせて確かめておきましょう。

参考:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」 https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/

使う道具とアカウントをそろえる

研修の日に「ログインできない」「人によって使っているAIが違う」となると、時間の半分がつまずきの解消で終わります。使うサービスを決め、会社としてのアカウントや設定を研修の前に用意しておきます。社内の情報共有にLarkなどのツールを使っている場合は、AIで作った下書きをどこに置くかも決めておくと、研修のあとに流れができます。

研修の中身の組み立て

研修は、経営者・管理職向けと社員向けに分けて組み立てるのがおすすめです。立場によって、知っておくべきことが違うからです。

経営者・管理職向け

  • 生成AIでできること・できないこと(もっともらしい間違いを書くことがある、など)
  • 自社のどの仕事に使うかの決め方と、始める順番
  • 社内ルールの中身と、それを守ってもらうための伝え方
  • AIで浮いた時間を何に使うか、使った社員をどう評価するか

経営者が自分で一度使ってみることも大切です。社長が使っていない道具は、社員にも広まりません。

社員向け

  • 会社の目的と社内ルール(入れてはいけない情報)
  • AIへの頼み方の基本(役割、目的、材料、出してほしい形を伝える)
  • 自分の仕事の題材での練習
  • 出てきた答えの確かめ方と、直し方の頼み方

自分の仕事の題材で練習する

研修でいちばん時間を使いたいのが、この練習です。事前に選んでおいた「AIに任せる仕事」を、実際に一人ずつやってみます。同じ頼み方でも、伝え方を変えると答えがどう変わるかを体験すると、翌日から使えるようになります。

頼み方の違いの例(作業報告書)【伝え方が少ない】「作業報告書を書いて」
【伝え方を足した】「あなたは外壁塗装会社の現場担当です。お客様にお渡しする本日の作業報告書を書いてください。作業内容:高圧洗浄、北面と東面。明日の予定:下塗り。天気:晴れ。お客様が読んで安心できる、ていねいな言葉で、300字くらいでまとめてください。」

練習のあとは、うまくいった頼み方を全員で見せ合います。社員それぞれの工夫が、そのまま次に説明するテンプレートの材料になります。

研修の回数と進め方の例

回対象内容
1回目経営者・管理職目的と任せる仕事を決める、社内ルールを決める
2回目社員全員目的とルールの共有、頼み方の基本、自分の仕事で練習
3回目社員全員2回目から使ってみた結果の共有、つまずいた所の解消、テンプレートの整理
以降担当者・全員月1回の振り返りと、使う仕事の追加

一度に長い時間をとるより、短い研修を間をあけて重ねるほうが定着します。研修と研修の間に実際の仕事で使ってみる期間があると、次の回で具体的な質問が出てくるからです。

研修の後に定着させる仕組み

研修が終わった時点では、まだ「使えるようになった」だけです。毎日の仕事で使われるようにするには、仕組みが要ります。ここで紹介する四つは、どれも特別な道具がなくても始められるものです。社内のチャットや共有フォルダなど、今ある場所を使って進めましょう。

使う場面を決める

「時間があるときに使ってみて」では使われません。「見積もりを出すときは、まずAIで明細の下書きをつくる」「口コミが届いたら、AIで返信の下書きをつくってから直す」のように、仕事の流れのどこで使うかを決めて、手順書に書き込みます。

テンプレートを共有する

うまくいった頼み方は、誰でもコピーして使えるテンプレートにして共有します。毎回ゼロから頼み方を考える必要がなくなり、AIが得意でない社員も同じ品質で使えます。

テンプレートの例(お客様へのお礼メール)あなたは【会社名】の【担当】です。次の内容で、お客様へのお礼のメールを書いてください。
・お客様:【A様】(名前は送信前に置き換える)
・お会いした日と内容:【  】
・次にお約束したこと:【  】
・言葉づかい:ていねい、短め

月1回の振り返り

月に一度、短い時間でよいので振り返りの場を持ちます。話すことは三つだけです。

  1. この1か月で、AIを使って楽になった仕事
  2. うまくいかなかったこと、困ったこと
  3. 来月から新しく任せてみる仕事

振り返りで出た良い使い方はテンプレートに足し、困ったことは社内ルールや手順書に反映します。これを続けると、AIの使い方が会社の中に少しずつたまっていきます。

聞ける相手を決める

社内に「AIのことはこの人に聞く」という担当を一人決めておくと、つまずいたときに止まりにくくなります。詳しい人である必要はありません。質問を集めて、振り返りの場に持ってくる役割です。担当の人が一人で抱え込まないよう、答えに困った質問は外部の支援先にまとめて相談する、という形にしておくと続けやすくなります。

定着したかどうかは、「研修を受けた人数」ではなく、「決めた仕事のうち、AIで下書きをつくるのが当たり前になったものがいくつあるか」で見ると分かりやすくなります。

よくある失敗

  • 研修を外部に一回頼んで終わりにする:その日は分かった気になっても、使う場面が決まっていないと元に戻ります
  • ルールを厳しくしすぎる:「何も入れてはいけない」に近いルールだと、使い道がなくなります。置き換えれば使える情報を示しましょう
  • ルールを決めずに始める:反対に、何も決めずに始めると、お客様の情報をそのまま入れてしまう人が出てきます
  • AIの答えをそのまま外に出す:数字や固有名詞の間違いがそのままお客様に届くことがあります。下書きとして扱い、人が確かめる手順を必ず入れます
  • 一部の詳しい社員に任せきりにする:その人がいないと回らない状態になります。テンプレートと手順書で、誰でも使える形にしましょう
  • いきなり大きな仕組みを作ろうとする:まずは一つの仕事で効果を確かめ、それから専用の仕組みづくりに進むほうが失敗が少なくなります

シクミカプラス+のAI研修・AI導入支援

シクミカプラス+は、福岡県を拠点に、中小企業のAI研修とAI導入支援を行っています。研修だけで終わらせず、任せる仕事を決める → 研修 → 必要なら専用の仕組みづくり → 月1回の訪問で定着まで、一続きでお手伝いします。

  • 研修の前の準備:今の仕事を伺い、AIに任せる仕事と始める順番、入力してはいけない情報などの社内ルールを一緒に決めます
  • 経営者向け・社員向けの研修:御社の実際の仕事を題材に、頼み方から確かめ方まで練習します
  • 専用の仕組みづくり:見積もりや文章づくりへのAIの組み込み、社内の資料を覚えたAI、社員教育の仕組みなど、必要に応じて開発します(システム開発・DX支援)
  • 月1回の訪問:使い方の確認、振り返り、社内研修を行い、困ったときはオンラインでも相談できます

AIの導入は、会社の仕事の流れを見直すきっかけにもなります。情報が紙やExcel、チャットに散らばっている場合は、業務の仕組み化とあわせて進めることもできます。研修の人数や回数、仕組みづくりの範囲によって内容が変わるため、費用はお話を伺ってからお見積りします。

サービスの内容と、実際に動いている仕組みの例は、福岡のAI導入支援・AI研修のページでご紹介しています。「何から始めればいいか分からない」という段階からご相談ください。

よくある質問

社内にAIやパソコンに詳しい人がいなくても研修できますか?
はい。詳しい人がいない会社を前提に、使う道具の準備から、頼み方の基本、社内ルールまで順番に進めます。まずは一つの仕事から小さく始めるのがおすすめです。
どのAIサービスを使えばよいですか?
ChatGPT、Claude、Geminiなどがあり、それぞれ特長や料金の形、入力した内容の扱いが違います。任せたい仕事と社内ルールに合わせて選ぶのがよいでしょう。研修の前に会社として一つに決めておくと、教える内容がそろいます。
お客様の情報をAIに入れても大丈夫ですか?
使うサービスや設定によって扱いが変わります。名前を「A様」に置き換えるなど個人情報を入れない使い方を基本にし、入れてよい情報と入れてはいけない情報を社内ルールで決めておきましょう。個人情報保護委員会の注意喚起も参考になります。
研修だけを頼むこともできますか?
はい。研修だけ、導入の相談だけ、仕組みの開発だけのご依頼もお受けしています。ただ、研修を使われるものにするには事前の準備と事後の振り返りが大切なので、その進め方もあわせてご提案します。
福岡県外の会社でも相談できますか?
はい。研修や相談はオンラインでも行えます。福岡県内の会社は訪問での研修にも対応しています。
AI研修を、使われるところまで。

任せる仕事と社内ルールを決めるところから、研修、専用の仕組みづくり、月1回の訪問での定着まで支援します。

清水 直也
清水 直也(しみず なおや)シクミカプラス+ 代表。福岡県を拠点に、Larkを使った店舗・中小企業の業務の仕組み化と、口コミ集客サービス「クチコミ+」の開発・運営を行っています。